Neighbors

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2022/03/16

秋田・秋田市

一杯の珈琲が誘う、心静かな時間。

秋田駅から歩いて20分ほどのところに喫茶店〈交点〉はある。大通りに面した細い階段をのぼった先、迎えてくれたのはマスターの五十嵐聖隆さんと奥様の麻友さん。 店内は聖隆さんが淹れる珈琲の香りに満たされていた。オリジナルブレンドの「凪ぐ空を(なぐそらを)」は、開店当初から通年で出している交点を代表する珈琲である。 ブレンドを手がけているのは同じく秋田市の〈08COFFEE〉だ。 08COFFEEのオーナー、児玉和也さんへオリジナルのブレンドを作ってほしいと依頼しに行った際、まず伝えたのは味とイメージ、それから脳裏に浮かぶ情景を綴った短文だったという。 「晴れの日もあるし、雨や曇りの日も、雪の日もある。空にだって起伏はあるけれど気持ちは穏やかに。そんな日々に寄り添うような、いつでも飲み親しみやすい珈琲にしたいですとお伝えしました」。 後日、児玉さんが提案してくれた珈琲は2パターン。1つ目は伝えたことにとても忠実、だがもう一つを試飲してこちらの方がさらに自分たちのイメージ通りで驚いた。 「私たちの希望を噛み砕いて、珈琲の味という形でアウトプットするその仕事に感服しました」。

深煎りながらも飲みやすい「凪ぐ空を」は通年味わえるが、春夏は浅煎りの「囀り(さえずり)」、秋冬は中煎りの「仄月(ほのづき)」も提供している。 ほかのふたつもイメージする情景を伝えて、08COFFEEに作ってもらったものである。 「囀り」はアイスで飲んでもおいしく、すっきりと軽やかで飲み終わったら街を歩いてみたくなるような珈琲を。 「仄月」は静謐な雪降る月夜に飲みたくなるような珈琲をイメージしているという。 「珈琲に込める僕らの想いはさまざまありますが、まずは訪れた方々がここでそれぞれの時間をゆっくりと過ごしてもらえたならうれしいです」。

また、最近では「珈琲と音楽のある月曜日の図書室」と題して、月曜は珈琲のみの提供、店主二人も本を読みながら在店するという普段とは異なる営業スタイルを試している。 お客様も読書をはじめ、書き物、編み物、縫い物、思索……思い思いの時間を静かにゆっくりと過ごす。日常の小休止のような時間。そこに一杯のおいしい珈琲があったなら、いっそう豊かなものになるだろう。

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shop info

交点

HP:https://www.kouten-akita.com/

Instagram:@kouten_akita

photo_Kaya Tei

text_Hana Onodera